父、健一の生活


天井板を張る作業の時に、暗くて、電気が欲しい、と言ったという向かい側のエピソードを、健一の人生もいくつか負わされるのであるが、健一もしょっちゅう、とっぷりと日が暮れて真っ暗になるまで、大工仕事をしてきたものである。
夕食に家に入る時は、8時9時ごろになるまで、夫婦二人精をこめて、仕事を終えることを優先したものであった。
食事は質素で、楽しむというより、働くための義理、とでもいうような感覚であった。
60代の晩年に、小さな車庫を作る時は、不自由な体で、誰も一杯飲んでこたつに入っていたがる雪の舞い落ちる夜の寒さの中に出て行って、深夜に及んで一人、桁材を繋いだり、上げたりして、完成したものであった。
はしごからばったり落ちて強打したこともあったようだが、我慢したようである。
小型の石油ストーヴを焚いていたようであったが、野外なのでたまに手をあたためるだけのものであったろう。