「出会っているその方が好いのである、日本人。」 

 親しくなった人に自分の本当の敵、犯人がいるはずがないのである。 一人たりっとも悪い人がいないのである。
 だからどんなにひどい事があって泣かされていても、永遠に犯人がいないレールの上を走らされていることになる。
 どうしてもどうしても犯人が見当たらない。 犯人を犯人と見定められない。 たんだあいつがいねばいい、と思うことしかない。
 事件というものは大作業なのである。 蚊を叩き潰すような少人数労働ではないのである。