上の家の兄が東京に現る。

 これはとんでもない珍事であった。
 あるいは待ちに待たれた事であった。
 結局は大分無様なことであった。
 勉強をしていなかった。
 明治神宮の裏でガードマンをしていたのを、目に留められたようである。
 「商業高校でも出たのか」
 皆で 「満杯だよ。 テレビに出て」 稼いでみな。 鏡で、自分の 「二曹自衛官みたいな姿」 使い物にならないか研究してみるんだな。 オーオーと人前で偉そうに大声出すじゃないか。 誰も思いも掛けないことだった。
 不潔な心模様を描いてから、勤めやれなくしてやれ。 捕まえろよ。 前川清にするのだぞ。 どうしても泣いてしまって、捕まえ切れなかったという。 「神隠しにあったか」
 思い返せば東京でも長い付き合いがあったようだ。
 思えば前から余計に下手な歌手が出ていたようだが、稼ぎ歌手の前準備でもあったか。
 「磨かざれば玉輝かず」 弟の進学に金かがるべや、わがらねが。 「弟にも学費出せないでいる」