小国村の民話から


万国共通の伝え話の要素に、洪水とドラゴンがあります。
たとえば岩手県では、遠野、沢内、口内など、盆地状の土地には必ず、昔湖であったという言い伝えが残っています。
氷河期の氷が溶けて満水になりついに一時に決壊、激流となって海にいたり、湖は幻のように消えたものと思われます。
自然な河川現象ではありませんので、いわば一瞬の出来事であったでしょう。
今高々と聳えて連なっている火山性の山脈も、ある時のやはり、悠久の列島形成史の中の一瞬の、真っ赤なマグマの盛り上がり現象でできたものと思われます。


小国村の民話に、小国村の湖の竜が田沢湖と更に八郎潟の竜と通じていたとか、鳥海山の麓にまで通っていたとかという空想的な話がありますが、実はその時の逃げ水の走り方を、先縄文人が見聞きして今に伝えているのではないかと思われます。
東北の地図を開けば納得のいくものがあります。
相当に驚くべき大変事であったでしょう。


長島川方面にもその跡があります。
千枚平の谷はその時に開かれたのかもしれません。
神様が矢を放って長島川を通したと小国村開闢伝説にあります。
月影湖沿いの山の麓を、見晴らし山から見渡すと、まるで人工的に切りそろえられたように川筋沿いに足先が削られているのが見えます。
その時の一瞬の激流の仕事だったのです。
兼山温泉辺りの河岸のきれいに並ぶ鏡のような岩の列も、その時の激流に一瞬にして切り取られた跡だと思います。


コピーしている者が生まれた部落の裏のエア・ポートのような丘もその時にへずられて均された跡なのかもしれません。
長島法師の窓が通った時の勢いというものは想像を絶するものがあったと思います。