莫大額と無様


「昼寝したら、昼寝して得したと思うのだ」と、二ヶ月契約のプレス工をしていた工場の課長さんが言っていた。
40を過ぎても車の免許もなく、やっと人に遅れたままの契約工員をやっている。
原付バイクの免許を取って、なんとかかんとか工場に通って来る様をみて、事務員が「バイクに乗ってる姿かっこいい」というのは、どうしたってそのまま見えがいいという意味には取れない。
冬にはちょっとした坂も氷って上れない。
男達の平均よりはるかに遅れて、昼寝していればいるほど、他所に貯金しているのだ、という意味であろう。
相当高い、世界一にもなるような莫大額の貯金に違いない。
40になっても、やっとプレス工をしているこの無様な者が何になるというのだ。
弟しか人並みに世に出ている者はこの家にいない。
大概誰でもそう思っていたコピーアーの半生である。
そして、コピー事務する役割ぐらいでは、その者の名など永遠に人の世にでしゃばらなくていいのである。


この計画は、イギリス人以外に誰かが、名前を出して偉くなるというのではないのである。