上の家の者と天皇陛下様との出会い

 




 上の家の相続者は最後まで個人的出世、襲位の準備にあるものではないようである。 従って天皇陛下様にご対面、お会いできる事などあるとは思われない。 地域の方々と同席する身分地位にもない。
 東京明治神宮裏の大企業施設で制服ガードマンを働いていたことがあった。 その時に目を止められたことがあったのかもしれない。
 テレビが賑やかだよ。 きっと全体をあまりに暗く貧しく寂しく見て取られたのであろう。 商業高校でも出たのか。 歌手デビューしてテレビ出演したら一家の稼ぎになり、いい景気付けになるのではないか。 実際、歌手の方にそういう例が少なくないようだ。 バーブ佐竹さんも言っておられた。 「どうしたんだい、そんな寂しい顔をして」(世の中なかなか豪勢なものなんだよ) 今に犯人になっちまうよ。 テレビぐらい買えないのか。 テレビは幸せにしてくれる家族みたいなものだよ。
 (弟にも学費出せないでいる。 この弟に、貧苦孤独の氷中の純、雪ん子みたいなものの望みがあったのだろう。 前回触れた藩主様御子ラインの方がこの純姿を平泉で目にし、そのあまりに質素な寂しい親子連れ身なりに泣かれたことがあったらしい。 哀れだなぁ、我孫子のように負ってみようか、と口にされたのかもしれない。 色も柄もないマンタのような灰白色一色のジャンパー姿で立っていたという。 後にその方の実娘がその純さんのお嫁さんになるのであるが、運命は敢えなく無念であった。)
 プロダクション社長約束で誘い役を頼まれた一家の方がおられたようだ。 どうしても声を掛けきれない。 何だか貧しい気ばかりがしてか「歌手にするって、泣いてしまう」等と言ってためらってしまったのだという。 寂しい暗い若者を拾ってちゃんとスター歌手に仕立てているものなんだよ。 
 結局この場合、「神隠しに会ったか」と言われてお目を離されたようである。