平安の世に地下工作員が比叡山から追放された事

 京都世界遺産ビデオ鑑賞中に届けられた事であった。
 これから比叡山は荒になるよ、と予言して組織員はその場を立ち去ったという。
 確かに他の社寺に比して、建築物等精妙度に落ちるのかもしれない。
 「桟たるもの」 の国、という基本プランがあったらしい。 障子の桟のような精密な折り目正しい国民。 
 唐の時代の事か、朝鮮が一色大柄の文化に偏しないようにとの忠告指導を行った中国人がいたそうである。 確かに建築物にその効果が見て取られるようであるが、衣裳や焼き物の単色、大柄の深みと率直性は、個性の競争においてどことも負けたものとは思われない。
 冷静な規則正しい発音体系の日本語は比較するところのない特異な言語である。 音程が低く安定していて、撥音が少なく母音原則が厳格である。 近隣のアジアにもラテン系やハワイ系にも類縁のない音韻の性格であると思われる。
 比叡山の地下組織員を追放する際、恐らく寺の者は地を這い歩く蟻の類に擬えて軽蔑したものと想像される。 
 ならば蟻の姿に似せて僧兵なるものを仕立て上げてやろう。
 その通りに黒頭巾、高下駄姿の荒法師が列を成して山道を上り下りする現象が生ずるのである。 
 時は、西洋の騎士そっくりの世襲弓道武芸者が興隆し武家政権が現れる変動の世の中であった。