仏人ビゴーが残す明治中期の日本人の姿

 防暑ヘルメットを目深に被り、色眼鏡を掛ける役人ファッションがあったようだ。
 明治の代と限ることではないかもしれないが、男はよく尻端折して、ふんどし裸の下半身をさらけ出して恥じず、女はどこでも乳房をさらして赤ん坊に授乳していた。
 ふんどし一つの全裸姿が異常でない世の中であったようだ。
 後者については、赤裸というものを押し付けられていたのではないかと推理する。 やせ我慢の道徳というものもあった。
 しかし世界に登場すべき国民の姿としては、これはあまりに rude で、今ではすっかり失せてしまった風体である。
 nude の原点は、宮廷の世間知らずな異風との出会いとそのセンセーションにあったものと想像する。
 西欧の王族男性の肖像画が、締まった白絹のパンツ姿で揺るぎないのは、この時のいわくを伝えているからであろうと推理する。 ナポレオンでさえその伝統的姿で自分の肖像画を描かせている。