剣舞の精粋たる鬼剣舞は二上の地にこそ相応しかった。

 やはり図られたことであったか。
 剣舞とはへんばい、即ち返閉の転であり、呪術の足使いであることは、舞の中身の一つ一つの仕草動作から疑いのないことである。 一心に、土中に何かを埋葬しようとしている。 鬼が出ている、というよりも、鬼を土中に返閉しようとしている姿と取るべきであろう。
 ところで、数百本の銅剣が出雲の遺跡地で発掘されている。 刃の向きもきっちりとそろえられていた。 これを無用になったが故の投棄と考えるべきであろうか。 土中に埋めるということでは、一つに葬るということがある。 他には、お経を瓶に入れて未来へのカプセルにするということがある。 後他に何があるであろうか。 鬼を封ずる、ということはあり得る。
 銅剣を封ずる、とは何の意味を有するのか。
 石上神宮でも宝剣フツの剣と宝器の類が箱に入れられて土中に埋められていたという。
 吹っ切れる、吹っ切れない、という言葉がある。 字の如く吹いて消し去る、などという軽い動作を意味内容とする言葉ではない。 大辞泉によれば、1. 口が開いて中にたまっていた膿が出る。 2. 心のわだかまりや迷いがなくなる。 という二つの意味を持つという。 
 一般的な地下組織を鬼としたというよりも、一抹の持続的なフツ払い儀式の存在を発見したことによる、返閉儀式が昔にあって、それが今剣舞の足使い等として伝えられているのかもしれない。 極めて日本独特の足使い伝統である。 相撲の四股も返閉儀式そのままの保持継続のように思われてくる。 (日本をメダカのような小魚ヒシコに見立てて、暗語的に醜いものをシコと呼んでからかっていた一派があったのではないか、という四股語源推理のご報告があった。 国の形を重要なキーワードとすることは第一原則のようによく見られることで、このヒシコの渾名の原因となった北海道の形から、菱、菱形をヒシと呼ぶことになったのかもしれない。)
 とにかく土中に埋めるとは、他にどのような意味が考えられるであろうか。