場所はスコットランドか。 

 なぜか、生垣沿いに邸敷地内に近付いてきた二人の日本人女性がいた。 生垣の花を愛でる通行人というものは毎年の登場人物であった。
 女性は日記を書く人であったようだ。 四季の花々が咲き乱れ、といったような内容の記述であったのだろう。 (バラもコスモスたちも枯れておしまいよ、女だっていろいろ咲き乱れるの、・・・)
 からたち、からたち、と生垣に咲いている花を一つ一つ数えるようにして歩いていた。
 英国貴族の庭は宏大で、どこから私有地なのか定かでない。 門前のアプローチでさえすでに私有地である。 (函屋敷にも、そのようなアプローチのある農家があって、公共道路と勘違いして立ち入ったりすると、捕り押さえられて二人とも罰を食らいかねない、といったそっくりの書き割り舞台があったようである。)
 これをキルトとか、チェックとかの伝統の始まりとまで考えるのは思い過ごしか。
 その時、「俺にはお前が最後の女」 「みちのく一人旅」 と歌う譲治さんそっくりの、若い貴族の方が立ち現われたのであろう。
 母娘で見る二重橋というのは、英国のみちのく、スコットランドの古城での情景なのかもしれない。 「月がとっても青いから、遠回りして帰ろ」 と欲張った旅人であったのか。
 譲治は門前で立ち会うばかり、という役回りのように思われる。 弟でもいない限り興味を失われたのかもしれない。