精一のルーツについて最終的な情報があった。

 西隼人は遊び人のあだ名を押し付けられようとしていた。 家の兄として生まれたのであるが、兄弟と争い父をも失って家を出た者であるという。 妻の不倫児との認定を受け、相続を拒絶された為であるらしい。 立ち位置が悪いというのも、蟹蝦の腹這いというのも西隼人時代の伝承であったようだ。 海岸でジャネットと出会っていたのではないかという疑いもかけられているようである。 これでは野垂れ死にするしかない、というような厳しい運命しか予想できない。 魚屋さんをやっていた時に顎の張った女性に目を掛けられ夫婦となっていたらしい。 テレビタレントの益岡きっこさんみたいな人でなかったか。 
 一方精一は港町で父親の不倫児として生を享けた者であると伝えられている。 地域と父親縁のある者であるとしても、亡くなった魚屋さんを継いでいるというのであるなら、世に数知れない縁側忍び込み寝込み襲い首絞め人の一人ということになる。 天下の二枚目俳優の江夏雅彦氏も出身地は同じであったようだ。 
 精一はとにかく施設の人間として組織活動に付き合って生きていくしかない。 この時に、他の皆さんと同じに無数の子孫を儲けていたのかもしれない。 数多くの教授や俳優やスター選手。 運動神経抜群であることは証明されているようである。 もしかして本来の家系から娘さんを嫁にもらっていたのではないかという情報がある。
 アラン・ドロン氏とも繋がりがある遺伝子のようで、何はなくても、極めて静かな、堅い、ストイックな気質の人間であることが見込まれていたのではないか推理する。 氏は高校時代女生徒の誘いを断ったために、一人人間でない者がいる、と噂を立てられたことがあるらしい。 その為の、人と付き合いのない孤独なギャングスターの登場であったと思われる。
 ストイックであることは、お色直し企画というものによって特定されたものと思われる。 誰かが思いっきり艶消し方向を望んだのであろう。 しかしこれも幕間の担当者個人の趣味趣向というものに過ぎない。 色噂も艶消しアィディアも。 最終的には、プライバシーの醜聞なぞどうでもいいことなのかもしれない。
 精一は中学生の頃から深々と修羅場と色道の門を潜らせられていて、遺伝子の試しは十分であった。
 背広姿のサラリーマン時代に、商品である蔵内の陶器に破損があることが見つかり、その言い開きもできないでいたことがあったらしい。 (無責任時代。 こそくな野郎ときたもんだ。)  更に隠そうとして質に入れたのかどうか。 すべては見通され納得の上で、みちのくに派遣されたものと想像される。