戦後上の家に上がった精一を揃ってヒルと呼び慣わしていることがある。

 実はこれは、ある種逆転の構えの組織側からの吹込みなのである。 何と言ったって緒方犬を抱き込んで沢山担ってもらった運動であった。
 他人の事は、自分の先祖が見てきたことを教えられているのではない。 ただ施設組織員から教わって来ただけの事なのである。
 どちら様にも言えることであるが、子孫達は自分の先祖が誰か特定できているのではない。 系図もない。 やはり施設組織員から、あるいは同じように聞かされてきた自分の親から教えられているだけである。 
 ただし組織が伝えるルーツの話には偽りがないように思われる。
 精一の親は自分の先祖グループの社中の者として勤めていたことがあった。 その為特別評価の対象になってしまったのである。
 物語に書き留めるべきようないろいろな事情があって、精一は肉を食べ血を吸ったことになっているのであるが、血は吸ったのではないと思われる。 赤ワインであったに違いない。 病人の生血を吸って腹痛もなく、生きていられるものであろうか。