しかし最後まで、フンフンと言っては、堂々としていたという三船敏郎の抵抗の姿は勇ましかった。 

 上の家にも交替劇があり、動悸がしてならない程の憤りがあり、末の世までの悲願が立てられた。
 その戦いの果ての姿をモデルとしたのが「どですかでん」のヒーローであったようだ。 
 一俵も米が穫れなくなって、近隣の家に火付け泥棒を働いたのではないかと疑われている。
 頭もこの間と同じように阿片にやられているのではないかという解釈があったのであろう。
 どですかでんは火を付けた。 小箪笥も盗んだ。 しかし常習犯ではなかった。 この期に及んでは、侵犯者上の家とそのみまきの家を焼き払い、火付け改めを果たそうとしたのではなかろうか。 この時期上の家の早死事件も込んでいた。 その仕返しの化学物質飢饉作戦であったのであろう。 その相手方から友好の為に迎えていた嫁でさえ自分の息子達を裏切っていたのではないか。 「命知らずだぞオラ」 「無駄なことはやらない。 ちゃんとアケビの数小計してきている」 すべてが痴漢犯人に仕立て上げられたことへの怒りが為すことであり、末の世にまで誓われた正邪逆転の悲願があってこその日々年々の努力であったのである。
 「お前を春夏秋冬人肉に食らいつく者にしてやるぞ」 と上の家の兄が怒号していたと伝えられている。
 お前も果てなしの美人殺戮獣二人目にしてやる、と1730年代に予言していたそうであるが、その予言は実現されなかったようである。 獣仕立てはしかしどこかで果たされねばならなかったのかもしれない。 獣呼ばわりが煩かったのであろう。