無償奉仕の西の家にもとうとう消滅の時が迫って来ていた。

 幕末期西の家はまた飢えに苦しめられていたのであろうか。
 その姿はお魚クンのヘルメット姿のように頭でっかちで顎のあたりがガリガリにやせ細っていた。
 どですかでんの様である。 友達からのチョコレートでやっと飢えを凌いでいたのと違うであろうか。 やや頭がいかれていたものと思われる。 ヘルメット姿の王選手にもそっくりである。
 これで孫屋敷の笹原さん方の選ばれた理由もそろって解明されることとなった。 一軒だけどうしても謎のままであった。 無理もない、西の家消滅期の姿形に知るに至らぬ限り思い付きようもない曰くであった。 
 このどですかでんを利用しようとした者がいた。 (すでに、西の家との食い別れを謀った、掏った、との潔白自白証言が届けられている。)
 他でもない西の家の分家の者による、止むを得ざるような生存策とでも言おうか。 組織相手の勤めに精進したのであろう、すでに近くの村に縁者の軒を並べていたという。 本家の昔の事を聞かされて仰天、その罪逃れに、この西の家本家の食いはぐれ者 (西の家は代々井藤氏上の家相手に秘かに私立警察戦線を張っていた。 それと知らずに上の家はこの度は西の家の娘を嫁にもらう。 和合策であろう。 これが恐ろしい事であった。 上の家は今度こそはボロボロの後家家に転落してしまう。 もう仲良くしてもいいじゃないか、と北上井藤氏直接の先祖が村の道を歩きながら怒号していたと伝えられている。 その仕返しが恐ろしかった。 西の家はもはやホッケ給食の家ではなくなっていたのか、米一俵の収入もなくなり、厳しい餓鬼道の底に落とされる。 友達になっていた「テル子」ちゃんから頂くチョコレートだけで飢えを凌いでいたのではなかろうか。 その「テル子」ちゃんこそ隣村分家の娘であった可能性がある。) を、噂にぴったりの悪人面にとっ捕まえて、世間に突き出そうという考えであったらしい。 これを名付けてユニクロ作戦という。 端的に狡い手口に出ているのであるから、頭がいかれているのもユニクロ作戦前段階の被害である疑いがある。 「馬鹿のウロ口を警察は相手にしまい。 下手をすると計画的示唆主犯者の責任がこちらに回りかねない。」 周囲に何かあるとしても馬鹿の所為にできる。 一層の悪人面用意になる。 未来が掛かっているのであるから、思い切って逞しい手に出たと推理探偵すべきであろう。
 しかし、このような事の一切合財は、更に組織の計画の奥深い運営の下に運ばれたことなのかもしれない。
 相手とすべく坂道に登場した者は「宗一さん」みたいな、特徴の強い男性であったらしい。 簡単に勝てる仕掛けではなかったらしい。 相手の状況を見てかわしてしまったというから、初めから通じていたのであろう。 相手は見るからに薬にやられて死んでいる状態でないかと口述していたという。 すべて準備万端の仕掛けばかりで、自然な事は何一つない擬装白昼試合未遂事件であった。 恐らく相手は柔道五段か空手道三段の自信家ではなかったか。 そのような格闘家の雰囲気のある「宗一さん」であった。
 どですかでんは最後にも、この場合無償奉仕にも値がない(あてがない)、と渋っていたと伝えられている。
 ちょうど仙台の叔母さんの家の長女長男に似た人が、片岡舞台の配役に上っておられたようであるが、その子孫が代を経て仙台に生まれ落ち、今の世に再び巡り合っていたということになるのであろうか。