結論として、とにもかくにも、精一は女性に対して乱暴を働く痴漢人間ではない、そのような遺伝子の持ち主ではなかったと断定することができる。

 演ずるところのクラーク・ゲーブルでもジーン・ケリーでもない。
 脳卒中の後遺症でロボットみたいに足を引きずって歩く所と家族思いの所だけが、シュワルツネッガーに似ていると言えようか。
 精一は本来性的人間ではなかった。 殺人逃亡者として保護者を失い、家なき子として働かざるを得ない身の上があった。 少年教育時に手にしていたものは本と鉛筆ではなく、指物大工の鑿だけであったことがよく分かるのである。