東京都の建物はすべて地下組織300年の物語をその設計図に秘めていて、一つごとの解明を待ち構えているが如きである。

 東京都新宿西口に聳え立つビルディング・都庁は、本内部落藤原神社神職世襲の家「西」を讃える為に建てられている。
 西は泥棒一家として藩士の間で有名であった。 泥棒の噂が仏に流れていたのか、泥棒映画が日本に流行り、怪盗ルパンが人気者となって弟の愛読書となっていたり、愛想尽かしにジャン・ジュネ泥棒日記を鼻先に突きつけられたりする。 
 蛇とも呼ばれる。 草むらの蛇と?、と殿様にフラレたりもする。 蛇の性が出る、と気味悪がられたりする。
 その蛇がどうして都庁の二本角となって東京都に聳え立っているのか。
 泥棒問題については前にも触れてきたことであり今回は省略し、簡明に西の人柄について説明させていただきたい。
 神主の言葉がメモされている。 「西はまるで子供みたいに素直に何でも頼まれたことを引き受ける。」 真っ直ぐに駆けだして、無私無心に勤める気でいる。 
 その西の見本を都民ならず国民は誰でも親しみ愛してきた。 都知事その人であり、背高で男前の西部警察陣である。 世界の御舟であり、中代であった。
 その真っ直ぐさを絶世の美男子程にして表現しているのである。 直立するビルディングに譬えるにもふさわしい。 岩手山子孫としては珍しく面長の方である。
 無計算無欲の直進行為が蛇ウワサの因となるとは皮肉なことである。 藤原時代以来の神職の家ではあったが、江戸時代となると、場合によっては、どちらかというと社勤めの家である以上に領民意識の方が高かったものと思われる。 すべてはお上の為の仕事であった。 澤内では外来採用の者が次々と田を拓いて藩士にまでなっているではないか。 全体に、藩経済に役立っている事なのである。