注進


注進、注進、とたぶん、吉二警部補は上司に、律儀にその時代の職業用語で報告に及んだものと思われる。
誰だって、国内に外国人が日本語を使って暮らしているとは思わなかった。
このようなみちのく地内にいることを見つけること自体すでに、由々しいことであり、法秩序の国事犯的な侵害であり、許されざる謀反的状況の発見であった。
しかしこのような人の上司では、きっとすでにそのような祖先の子孫であったろうと思う。
どうしてそんなことがありうるのだろうか。
何かがあって、内面的に折れてしまうことがあったと思われる。
いずれにしても物柔らかな、心配りのある人であった。


注進けね? (くれない?) とは後で誰かがからかったことばなのか。