「歌えや踊れや」の対となるエピソードがあった

子供が一声うなる毎に褒美を上げたという歌手ママの話や、美空ひばりに始まるちびっこ歌手の先例でもないだろうか。
聾唖障害者の母親と幼い姉弟の家族が生活に困っていたようだ。
一族の家の掃除婦や洗濯婦、皿洗い手伝いなどをして暮らしていたものと思われる。
その親子を、他所の者だが昼の食事の輪の中に入れてやることがあったのであろう。
その時、かわいい子供に何か歌わせようとしたり、たわいない身振り運動を請求したものと思われる。
「運動させられたそうだ」と、向こうの事と相応させられた余興があったと想像する。
それで、子供に「駆けっこ、駆けっこ」などと言って、足を早く回すのを囃したりしたことがあったのであろう。
足が速くて目に見えなかった、などという村人のお世辞のような感想まで伝えられている。
そんなことで、子供を「昼っこ」などとあだ名をつけてからかう人もいたのであろう。

思えば上の家は不運にも代々、若い母親と子供の母子家庭の状態の時があった事が古い記録で知られる。
その為田んぼを分家や下の家に分け与えていたようである。
村内一帯に亙る畑地はそのまま残っていた。
それでもあれやこれやとがんばって、一町歩の水田を拓いていたという。