続き

これで最後かと思ったが、現在の全人類の生活に関わる問題でもあるので、最後まで先生方の究明されたお仕事の結論だけを窺おうと思う。


石油の話であるが、地図を見るとやはり発掘される所はいくつかの条件が合う、特殊な場所であることが再確認される。
発見の現場仕事に参考になるのならよろこばしいことである。
中国の例で見れば、トンペイ平原とジュンガル盆地タリム盆地に石油が採掘されている。
見事ななだらかな平盤状の囲われ地で、昔は深い入海の浅瀬の海底を成していたことが想像される。
海水の流れが静かで、海生生物の死骸が沈殿堆積しやすかったであろう。
石油の湧く所はどこも似たような地形の条件である。
もう少し目を近づければ、盆地のど真ん中でなく、山嶺の麓や丘陵の外れ近辺に多くの油田がある。
アンデス山脈の北から南まで点々とその両脇に油田を抱えているのと同じように。
極論すると、油井の確率は傾斜地にある、と考えていいのではないかと思う。
それが、カスピ海沿岸一帯の油田の成立を説明してくれるのである。
だからカスピ海の中や、盆地の中は確率が低いのである。


最も豊富に供給してきてくれた、メキシコ湾岸、北海、ペルシャ湾岸、西シベリア低地、及び南シナ海油田については、先述している。
後成のメコン河河口のデルタ地帯を取り外して、ボルネオ島を持って来ると、地勢の様子までピッタリとモザイクの一片のように、バンコクからホーチミンまでの海岸線にはまることがわかる。


入海といえば、地中海であるが、ヨーロッパ側の海岸線は険しい山の連なりで、海生生物の沈澱そのものが成り立たなかったであろう。
アフリカ側、低地の奥行きがある所が有望視されているようである。


コピーアーの故郷紹介で、内陸部大氷河の融水湖の伝説と、激しい流れの仕事と思われる地形のいくつかから、思わぬ連鎖のご教示を賜ったものである。


エネルギー問題のアイデアとしては、古くに、ブラジルでかつて実用化されていた、さとうきびからのアルコールの利用を提出していた。
もっとも生育が良くてかさがある草本植物がいいのである。
とうもろこし類が一番であろうか。
しかも3ヶ月ぐらいで育つ。
少なくても1万年はかかっている石油を燃やした場合、その炭素分は消費時点で1万年目に大気に放出され、再び有機体に構成されることがあったとしても、また化石燃料としてサイクル利用されるということはない。
炭素分の今までのバランス回復には、自然現象だけで言えば、地球上の緑がその分増えなければならない。
ところがむしろ、地上の有機生物体は植物が砂漠化によって大規模に減少しているために、総量を減らしているようである。
木もサイクル資源であるが、3ヶ月で育つきび類草本の方がサイクリングが把握しやすい。
これをエネルギー換金作物農業と銘打って、アフリカ諸国の産業にできないかと考えたことがある。
アフリカを集中的に地球のエネルギー一大基地としようということである。
植物なら何でもいいのであるから、砂漠地でも栽培可能な海水性の品種があったらいいであろう。
アルコールは、これからの自動車の動力源として狙われている、バッテリー電気に必要な水素の原材料ともなる。
農作物の広がる風景は、美観であり、親しみやすく潤いがあって、健康にもよいものである。


ついでに温暖化について。
地球はこれから氷河期に進むはすであると言われている。
しかしそれは、1万年2万年後に徐々に向かうレベルの話である。
人類が生まれたとか、アフリカを出てアジアに向かったとかの昔と同じく遠い先のことである。
ましてや、千年先のことでもなく、先ず百年五十年先のことを考えねばならないのが、現実的な責任のある人間の勤めである。
この一年二年でも、温暖化の異常を感じることがある。
間違いなく、今までの自然の現象でなく、止むことのない人間活動の拡大によって、かつてない気候の変化が進むばかりであることは明らかである。
シベリア、チベット、カナダに緑が広がるということはあるであろうが。


とにもかくにも、石油の代替物として、発電所があるだけでは間に合わない世の中である。
送電される電気エネルギーの心配とは別に、先が見えてきた石油の代わりになるもの、アルコールと水素発電の集中的開発を、先々を見通す先生方が前々から推奨しておられたことである。