* いくつか再説してみたい


「あっ、て大きな声を立てて驚くのだぞ、本当に悪いことをしてら人みたいに」
あっ、と驚く為五郎、と言うにも、はっきりと目に付く、泥臭い粉飾衣装が伴っているのである。
「ほやみたいに、しゃがんでなにごそごそといじくってんだ」
「あがるから、ぼやぼやしていけばいいんだ」
他人には絶対迷惑を掛けたくない人は、本当にピクルスもしないで、「茶」をして来たのであろう。
このような人が自然とは思えないほど多い。
また、イート、イートというけれど、私達土地を奪われてもう真っ茶色だったのさ。


その人は自己評価ゼロだった。
残忍強欲傲慢ということは、この人からは発していない。
ターミネーター2」の気を失うような長い落下シーンがあるが、近いと思う。
そして、ゴロッと丸太のように身を転がす。
人生を棒に振ったのである。
自己放下というものであろうが、欲望のまま動物的になるというのではない。
自棄を起こしたというのでなく、一心なことがあったといえる。


「しん?」 ?  「しんこく?」 真黒? このような疑問文があった。
「あんた、申告?」 という意味であったろう。
カメでも、タメゴロウでも、スリでも、なんやかやと潜ったのでも、結局申告事件のおかげで流民となった無念さから飛び込んだ、特定の人達であったと思われる。
相当にごしゃげで大胆に海を渡ろうとした雰囲気が、ある世間では一般的であったと想像される。
わざと大きな黒々と光るように磨きたてた甕を棚に載せて、カメを持ってらぞ、と叫ぶみたいにしていたように。


村上の家の事件に関して。
難死というのでないが、泥棒が捕まる事件が古文書にあった。
猿橋伝説では、人間が川に落とされ何人も亡くなって食べられている。
「記憶力だ」と言われた人が、海岸で難死人の側に立っていた所を見つけられたという。
その後、とうとう獄内で水死した人がいた。
なんしちゅう、という芝居を打たれてしまったということであろう。