周辺の殺人事件の伝聞とその真相


早くに地域の人達がいなくなったようだという情報があった。
私はやっと工員生活を始めていた頃で、当然隣近所との付き合いもなく、確認できたことではなかった。
表面的にも理由がはっきり見えてこない。
たぶん殺人用設備を据え付けて使い始めた頃であったろう。
地域の特定の専門運動員達が次々といなくなった、という情報も聞いたことがある。
小国村系列の運動員達であったろうか。
組織員を整理し始めたのであると思う。
嘘だと言われれば、そうか、と世間のないままうなづくだけの、地下電波情報であった。
私自身電波相手に忙しく、落ち着いて生活することもできない、長年月の悪戦苦闘の状態で、事件を調べて回るような余裕もなかった。
すべてラジオで聞かされるから、本当かと思うだけの事件情報であった。
一件だけ、前のうちの嫁さんが別の人になったように思ったことがあった。
記憶に残るほどその嫁さんの顔を見たこともなかったのだが、この場合初めて人が亡くなってしまった事を眼にしたような気がした。


母が寝たきり状態になってから、介護福祉を頼んだ。
毎日ヘルパーさんが訪れ、看護婦さんも毎週訪れた。
若いヘルパーさんがしばらくしてから来なくなることがあった。
ラジオでは聞かされることがあった。
ヘルパーさん、看護婦さん方は一人たりとも好意的でない人はいなかったと言える。
どうしていなくなるのか分からない。
似たような人が来ることがあるが、前の人より親身であるということは決してない。
人を入れ替える理由がない。
残念にも、両隣のおかぁさん方も亡くなってしまったようだ。
地域で一番親身に声を掛けてくれていた人達である。
そういう人達がいなくなって、周りに馴染みのない人達だけがいるようになってしまった。
もっと心の交流があった人達ばかりであった。


「イド」戦をやってしまったことがあるという。
なにしろイギリス人幹部が指導するのである。
負けるわけないであろうし、ばれるはずもあるまい。
ところが、地下的には日本国は、イドを敵にするのでは「日本人が生きて行けない仕掛け」に見えたという前述の報告もあるような地下の実態である上に、イギリス人からの裏切りがあったのではたまらない。
ブツの恨みもあろう。
そして今、あれイドだ、イドなくしよう、とかいって、だまして誘い、イドに敵対する者を片付ける仕事が進められているようだという。
私としては、運動員の復讐心がリードしている作戦とは取らない。
必ず、悪戯なイギリス人の指導と援護があるのである。
ある時、西洋人の女性指導員が、殺人係りにこのようにアドバイスしていたという。
仕事みたいにきまじめに、誠実感を出してだますのです。


殺人犯になってもある人を守りたいという作戦があるという。
それなら、一生涯殿様に付きっきりの家来になる、というほどその人に人生を奉じるのでなければ嘘である。
本当にそんな気持ちの人がいるとは思われない。
中には付いていられる人もいるかもしれないが、ほとんどはいられるものではない。
殺人活動まで頼まれるとはどういう気持ちからであろうか。
潜ってねね、潜ってねね、というけれどどういう訳でそのような責務があるのだろうか。
引き受けなければならない義理というものはなかったと思う。
自分の冒険心が引き受けたのである。


ところで、穴にいるからといって、人の世話にばかりいるのではない。
人を守るのでなく、卑しいことができるというのでがんばっているような穴もあるのである。