当たり目の男という者


 花巻の山の神神社の祭りに盗みをして見つかったことがあるらしい。山ノ神神社の境内地は今国道が走っていて、見るも無残に寂しく小柄な社が道沿いに標のように残されている。(宮沢賢治の童話で想像するのであるが)
 賢治の童話に出てくる山男のモデルなのかもしれない。頭がすでにおかしかったらしい。これはまずいと、山越えに隣の沢内村に追い遣ったという。夜中に家に入ろうとしたことがあったという噂が立っていたらしい。女性に弱い薄弱者になっていたのであろう。所々で土木工事の手伝いをして暮らしていたようである。短髪の土木労働者。
 出稼ぎ労働者になって東京に出る。高い所でのブロック運びは怖いものであった。朝から何も食べていないので、トラックの助手をしていても、貧血で倒れてしまった。
 帰りの長列車で前の席に座っている女性に見惚れてしまう。撲殺、という言葉がある。金がない、と言っていたという。本当なら、後半生はずっと施設暮らしの身の上であったろう。
 ショーケン黒沢年男峰岸徹、というジャンルであろうか。


 何とか当たって下さい、私祈ってます、という仕掛け種であろうか。「オラそれだば、(水道工事の)おじさん、て呼んでらったのだ。悪がったが」