そして後に、東西合体の東側の出発地も日本に捜し求められた。

 登場人物ルーツの東西合体の計画が何時から始められたかは定かではない。
 西洋の王家の広い部屋の中程に、日本の御帳台のような寝台が置かれていることがある。 これはかつて日本人が招待された事を率直に伝え、明かすものであるというように示されることがある。 殊更にその由来を示し見せ付ける伝統があるようにも思われる。
 この場合は、淡路島辺りの女性が選ばれたものと推理される。
 大人数の人間が西洋に運ばれることになったのは、やはり 1700 年以後のことであろうか。
 なぜ陸奥湯田町が選ばれたのか。 単純に、出身地をいささかミステリーの境界に置きたかったからなのかもしれない。 道の奥に人は心を惹かれるものである。
 先述の二上山そっくりの山にも出会ったが、河東側の丘から眺めると、
 日本で最も長い奥羽山脈の一箇所、人を誘い込むように V 字形に窪んでいる所が見える。 仙人の窓と呼ぶ。
 陸奥に入ってから更に眼を引く、長大な山脈中の大きな見通し。 湯田町選定の原因は 「道の奥」 ということにあったと決定されようか。 
 湯田町は古くから、太平洋側と日本海側を結ぶ、陸奥唯一の人里の続く街道の町であるばかりでなく、賑やかな鉱山の町でもあった。 行きはぐれて山賊にでも出会うような奥深い所ではなかった。