最低限保証の意味がもう一つ。 彼奴は東京で浴女の裸を覗き見していたという噂があった。 

相手は顔は中田喜子さんみたいな人であったという。 警察も呼ぶかという状況に発展していたのかもしれない。 その最低限保証の布包めとは、真昼の蜃気楼というセリフに籠められているのだという。 彼奴は蜃気楼実験に東京中珍しい安アパートを紹介させられていたのである。 大学に入っていることになるが、彼奴の東京滞在の目的は二つ、この蜃気楼体験と、明治神宮裏でガードマンをして御眼に止められることばかりである。
 真昼の蜃気楼とは、過去二千年以上に渡る人間精神史操縦術の秘密である。 この神秘によってのみ世界史は、知らずに地下組織を主宰者とする奇妙な運命の下に置かれることとなる。