西口神社系のヘルメットをかぶったような丸頭は、やはり大蔵氏から下った特徴のようである。

 西の家最後の男どですかでんは、ある目撃報告によると、眉毛の濃い優しくて気の好い男だてであったようである。
 テレビのお魚クンにそっくりである。 貧しさの余り頬がこけていたのであるが、生まれ変われば長谷川一夫そっくりの福々しい顔に再生されることが可能であったのである。 
 「あなたとつながると信じていた」 ウナギの髭のような二本の角は、「二つゴーゴーゴー」と空の雲を手でつかむようである、という心中を表示するサインであったのである。 一本の角は、世界に子孫を繰り出していた白木埜右衛門団の世界史取りである。
 どですかでんはこの時、断末魔の飢えの苦しみに堪えていた。 「田の米一俵も取れなくなって、お前を春夏秋冬人肉に食らいつく者にしてやる」と呪われたのは、日没前の西の家のこのお魚クンであったろうか。 「二人目の極悪人名代の者にしてやる」とも言われたのかもしれない。 背の低い親戚の女の子ハツさんからチョコレートをもらって、やっと飢えをしのいでいたという過去からの報告がある。 上の家からの猛攻撃にあって家族も倒れ米も無くなっているという西の家臨終のこの時に、痩せさらばえたお魚クンの身の上に鞭は更に振り上げられる。 シンクロ謀略の危機が身に迫りつつあった。 チョコレートは怪しかった。 ハツさんも分家の子孫であった。 分家側にしても押し付けられたものであった。 現在においても、その心に染まっている者と、その謀略の表現するところが正しいものと信じている者がいるようである。 計画では、村に入る事件現場の坂道で武術の達人に眼を抉られ落命するはずであった。 坂道事件一切の犯人として見つかり評判になるべきであった。 ところが武芸の達人は相手が死んでいるようなのを見て、逃げ帰ってしまったようである。 友人の敵か何かに思わせられていたのであろう。