引き続き、神官様の不始末行為を釈明する。

 こけ猿の壺に入っていたのは飲み水であったろうか、とにかくその飲み物に何かを混ぜ入れていたことは間違いない事であろう。
 すると、有名な阿片毒であることにも違いはあるまい。 病人にして人を殺めてしまおうという毒ではない。 豚のようにして転がして置こうという麻薬物である。 ("Opium eater" と"Complete angler"という英文学書が二冊筆記者の手元にある。 私は大学生として一冊の原書も読み終えた者ではなかったが、ある時ヤクザHelperの草薙君が登場して、英文科卒程の英文学原典読書家となることがあった。 上の家に泣いておられたようである。 下の家の子孫であったと思われる。― いつだか犬の訓練士となって家に寄って下さった女性の方もおられたが、やはり下の家の子孫で同じ気持ちの人であったように見受けられた。 「ワンちゃんは一所懸命に家守りでして吠えでるのだよ。」― とにかく面白そうな小説の類に溢れている英文学のカタログ中、opium eater と complete angler ではとりわけても興味の範囲外の選択であった。 まず間違いなく、英地下室はアジアと上の家を阿片で釣り上げたよという一重大事実の連絡報告であったと思われる。)
 取調官も同じ判断であった。 証拠にその字を見よ、と語ったという。 「字がない。」 元々はそんなに字の下手な人ではなかったのである。
 上の家と組織との出会いの日があった。 予めどこからか話を聞いていて、神官は台所に身を潜めていたという。 我は紀氏たる公家の身であった者の子孫である。 その手の文化地下活動員に身を落とすことはできない、と胸を張ったその精神で、組織に見つからないよう身を屈めていたのであろう。 「何をしている」 「何だそれは」 「これはワシの財宝である。」 「どのようにして使うのか」 神官は愛想良く、トレチャリトレチャリとその財宝を身に纏って見せる。 「それは葬式中で火が付いているのか」 「?」
 新しく買い求める余裕があるわけもなく、財宝の修繕は自分でやる習慣であったのだろうが、取調官が訪れた日にはその修繕に手が明々白々にもいわば横倒しの状態である。 いわば立体的に詰めるべき作業を、単に表面を擦るが如き無力状態で投げていたようであったというメモがあるようである。 「手がない。」
 疑問に思うのは、この時上の家には他に家族がいなかったのか。 予め処理されていた、という荒仕事が疑われなくもない。
 「一切無罪」 「少年虐待は問題だな」
 以上で、上の家紀氏流は過去何百年間の金の道の古社を離れさせられ、他所に家屋敷を授かることとなる。 旦那様で通してきた身の上の通りに百姓仕事にはなかなか身を乗り出せなかった、という地域の世話人の言葉が伝えられている。 しようもなくまた神社を起こして人を集めようとしたそうであるが、説得されて遂に農業の人となる決心をしたのだという。 
 「名前」息女事件が、実は藩の内命によったものであること及び二人仕事であることは一切打ち明けなかったのであろう。 従って丸ごと女性事件の罪人としての軽蔑を買うことになる他ない。
 しかし、気持ちは未だ失墜してしまっているのではなかった。 まだまだ、一番となって、三億劫年全世界の万経典を記し残そうではないか。
 そして恥ずることもなく、棚の上にしゃれこうべを祀って4年もの間お経を誦し続けたのだという。 村人達は一人勤めの表面だけを見て取って、「お寺だ、お寺だ」 「棚ものだ、棚ものだ」 とあきれ返って口々に囃し立てていたようで、今日でも湯田町縁の方角から、たなものだ、たなものだ、テラだ、テラだ、と上の家の当主である筆記者個人に向けて声が上がってきそうな雰囲気を感じさせられることがある。
 四年の長きにも及んでしゃれこうべを弔い続けるというのは、全く自分一人だけの心の契約事であることであったと考えるべきであろう 
   今日はここまでとします。 前回は短文ながら文章が乱雑のままでした。 いくつか修整してここに手数不足の失礼をばお詫び申し上げます。

   By Underground